地域の宝物を“みんなで”まもる・つくる・味わう場所「和島トゥー・ル・モンド」/長岡市


2021年11月30日 7861ビュー
自然豊かな山あいにある、廃校になった木造校舎をリノベーションしたレストラン。
地産地消にこだわった、本格的なフランス料理。
 
この情報を聞いただけで私の興味は高まりました。
同時に芽生えた感情がもう一つ。
「フランス料理って、普段はお目にかからないけれど楽しめるだろうか…」
という庶民ならではの不安感です。笑
 
しかし調べてみると、「トゥー・ル・モンド」とは、「みんなで」という意味なんだそうです。(ならば大丈夫でしょう!)
 
11月下旬のよく晴れた日。
長岡市和島地区にある「和島トゥー・ル・モンド」へ行ってきました。

和島トゥー・ル・モンド ~100年の時をこえて~

北陸自動車道見附中之島I.C.から車で約25分。
築85年の「旧島田小学校」の木造校舎をリノベーションし、2012年にオープンした「和島トゥー・ル・モンド」。
廃校になった小学校を活かした建物「和島トゥー・ル・モンド」は、木造校舎にレストラン「Bague(バーグ)」と鉄筋校舎にパン工房「Harmonie(アルモニエ)」があります。
 
ではさっそく校舎の中へ!

時が止まっているかのような懐かしい空間

キーンコーンカーンコーン……
 
というチャイムの音こそ聞こえてきませんでしたが、子供の頃に過ごした学校の風景がそのままあります。この雰囲気、ちょっと感動です!
教室の中もほぼ当時のままの状態で残されています。
今でも子供たちの声が聞こえてきそうな教室や廊下。
この懐かしい雰囲気を体感できるこの場所は、とても貴重ではないでしょうか。

レストランBague(バーグ)

校舎一階のあるレストランBague(バーグ)へ。こちらは入口。
ガラス窓がはめ込まれた壁からは、おしゃれに並べられたグラスや、調理場の様子を見ることができました。
レストランBagueの店内へ。
もともとは音楽室と家庭科室だった場所だそうです。
太く立派な木の梁や趣のある窓枠など、昔の雰囲気を残しつつ、フランス料理レストランとしてのしつらえが素晴らしいです。
バーカウンターもありました。ワインと一品料理を楽しめそうですね♪
過去と現代がうまく調和した空間です。
テーブルには引き出しが付いていて、中にはカトラリーが入っていました!
教室の机をイメージしてつくられたそうです。
たしかに鉛筆や消しゴムが入っていても、違和感がないかもしれません(笑)
ランチメニューは3種類。今回は、プレミアムコース(3,410円・税込)を注文しました。
お料理が一つ一つ運ばれてきて、サービスのスタッフの方が丁寧に説明してくれます。
「メークインを使用したじゃがいものスープに、良寛牛乳を使ったミルクの泡を乗せてございます。」
 
さすがフランス料理。一品目のスープから美しい!
そして「良寛牛乳」といえば、和島地区からほど近い良寛和尚生誕の地・出雲崎町でつくられている牛乳。自社で製造する新鮮な牛乳の味わいが人気で、長年親しまれている牛乳です。
 
濃厚な素材の味が感じられるじゃがいものスープと、良寛牛乳のミルク感あふれるやさしい泡が、身体をあたためてくれました。
次は前菜。岩船産のホウボウに、下にひいてある黄色いものが、地元でとれた糸瓜とクスクスのタブレというサラダです。
添えられている野菜たちの美しさたるや…。
色合い、カットの仕方、並べられ方など、素晴らしいとしか言いようがありません。
そして素晴らしいのは見た目だけではありません。
みずみずしい野菜の新鮮さと、野菜自体の甘みを味わうことができます!
 
寺泊地区で採れた紫芋、赤玉ねぎ、「秋こまち」という大根。
出雲崎町で採れた隼人瓜、温海カブ。
中之島町でとれた人参。
 
すべて地元の野菜が使われています。
秋鮭のムニエルと菌床キノコのクリームソース。
 
添えられている野菜は、寺泊産のサツマイモ、カボチャ、サトイモ、ジャガイモ、ネギ、大根の「秋こまち」を煮含めてから焼いたもの。南蒲産のゴボウ。
そして、校庭でとれた月桂樹(ローリエ)で香りをつけたオリーブオイルがかけてあります。
 
丁寧な調理と上品な味付けがされつつも、秋鮭、キノコ、野菜の素材の味わいもしっかりと感じられます。
お肉料理の登場です。
佐渡産の島黒豚のモモ肉を低温で焼き上げたもの。
その上には、三条産の梨のソースに寺泊産の柚子皮のおろしがかかっています。
 
肉の旨味がぎゅっと閉じ込められている島黒豚だけでも十分な美味しさですが、
梨と柚子の香りのソースを絡めてたべると絶妙な組み合わせの味が口の中に広がりました。
デザートに注文したものは「本日のアイス」
寺泊産のカボチャのピュレをアイスに仕立てたものです。
 
えー私、この一品によってアイスの概念がくつがえされました。
カボチャ感が、普通に想像する200倍くらいあるんです!カボチャの実をかなり多めに使って作られているそうです。衝撃を覚えるほど美味しいデザートで締めさせていただきました!

「料理は素材を越えられない」

シェフの中澤壮一さんにお話しをお聞きしました。
中澤シェフは南魚沼市のご出身。東京で12年間フランス料理の修行した後、ここ「和島トゥー・ル・モンド」レストランBagueのオープン以来シェフとして携わっていらっしゃいます。

——ここまで地元産ばかりの食材を使われていることに驚きました。どのようにして仕入れているのですか?

中澤シェフ:野菜は主に農産物直売所で仕入れています。ここからは、出雲崎の直売所や中之島の直売所が近いんです。どちらも車で20分くらいのところです。


——こんなに美味しい野菜が直売所で手に入るんですね。仕込みや調理に時間をかけているのですか?

中澤シェフ:野菜自体が美味しいものがたくさんあるんです。野菜によっては、一般に流通するものと違って、熟す前に収穫して追熟(ついじゅく)させるものではなくて、土の中で完熟させた状態で収穫し直売所に出してくれるものがあります。そういうものは野菜自体に甘みがあっておいしいんです。ですから調理にはあえて手をかけ過ぎないようにしています。


——ホームページに「土地が素材が料理です」とありましたが、この地域の素材は特別なおいしさなのですか?

中澤シェフ:オープン準備の時だったのですが、出雲崎の直売所で売られていたカブを食べたらすごく甘くて、衝撃を受けたんです。ほかにも美味しい野菜がたくさんあることを知りました。
それから9年以上が経ちますが、おいしい素材を提供してくれる生産者さんとのつながりが増えていきました。
たとえば「黒大根」なんてそうなのですが、こちらから「こんな農作物をつくって欲しい」とリクエストをすることもあります。生産者さんは試行錯誤して苦労しながらも、うちの為においしい素材を作ってくれるんです。
そういう意味で、この土地にある素材自体が料理なんです。

「みんなで」つくる・まもる・たのしむ場所

ここで働く人たち、農産物直売所に納品する生産者、そして訪れるお客さん。
まさに「みんな」で、つくり、守られ、楽しまれる場所の「和島トゥー・ル・モンド」。
 
「持続可能な社会」「循環型社会」「多様性」
和島トゥー・ル・モンドは、これら要素が全て詰まっている地域の宝物だと感じました。
山あいの自然に囲まれた場所にたたずむ木造校舎で食べる、地産地消のフランス料理。
昔のままの状態で残されている教室や廊下や体育館。

時には慌ただしい日々から離れ、「和島トゥー・ル・モンド」にてゆっくりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

和島トゥー・ル・モンド

住所:新潟県長岡市和島中沢乙64-1
TEL:0258-74-3002

<Bague(バーグ)>
営業時間:
ランチ:①11:00 ②11:30 ③12:00 ④13:30〜
以上のお時間よりお選びください。事前予約をお勧めさせて頂いております。
ディナー:18:00~20:30 Last Order (21:30 close)
1週間前、8名様以上の完全御予約制とさせて頂いております。
定休日:毎週水・木曜日
※ディナーの営業日は、ホームページにてご確認ください。
TEL:0258-74-3004

<Harmonie(アルモニエ)>
定休日:毎週水曜日・木曜日
TEL:0258-84-7429

和島トゥー・ル・モンド

この記事を書いた人
中林 憲司(なかばやし けんじ)

1978年新潟県加茂市出身。サラリーマンからライター&ブロガーに転身し第二の人生をスタート。愛する新潟と人生を探訪中。

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