注目の寿司職人。五感で楽しむ寿司を体験!/新発田市


2024年04月04日 5193ビュー
先日、発表となった「新潟ガストロノミーアワード」の若手シェフ部門30。和洋中問わず、今注目の若手シェフが選出されたこちらの賞。今回はその中でもうまい寿司を食べさせると評判のお店にお邪魔してきた。
訪れたのは、新発田駅の目の前に店を構える、「鮨 和食 ながしま」さん。
4代目の長嶋直人さんが出迎えてくれた。

2年前に寿司メインのお店へシフト

新潟市内の日本料理屋で2年ほど修行したあとに、古町の人気寿司店で3年間腕を磨いた長嶋さん。実家に戻ってきたものの、程なくして新型コロナウイルス禍となってしまったそう。
「戻ってきた当初は、寿司が出る食堂といった感じのお店でした。板前さんがいて、料理を作ってくれて、僕は寿司を握るそんなスタイルだったのですが、新型ウイルス禍となり、諸々と状況がよくなくなり始めました。このままでは先がないかもしれない。そう思い、僕がやってみたいと思っていたお店、寿司をメインに据えた今のスタイルにシフトすることを決めました。それが2年前のことです」(長嶋さん)。
昨年末ごろにはカウンターを占拠していたガラスケースをなくし、手元の仕事を見てもらえるように改装を行った。寿司のコースは3種類。5,500円、7,700円、11,000円はすべて夜のみ提供、握りのほか、手の込んだつまみも一緒に供される。

「修行先から戻ってきた弟は僕よりも料理がうまいんです。つまみは全部まかせています」という、四季に溢れ、目にも鮮やかなつまみも、ながしまの寿司コースの満足度を上げている要因だそう。

2種類のシャリをネタに合わせて使い分ける

「寿司をメインに据えるようになってから、本当にいろいろなお店に勉強に行くようになりました。そこでいいなって思えた要素や仕事は、柔軟に自分の店にも取り入れています」と話してくれたその一例がながしまで使っているシャリ。実はこちらのお店では、2種類のシャリを使い分けている。

「1つ目は僕の祖父が作ったうちの店伝統の味。僕は祖父の作るシャリが好きでした。少し手は加えましたが、米酢に砂糖、塩でどこか懐かしさを感じるシャリに仕上がっていると思います。もう一つのシャリが赤酢ベースのもの。黒酢とザラメ、塩で作る少しエッジが効いた味わいです」。

この2種類のシャリをネタごとに使い分ける。アナゴやブリ、トロに赤身など、旨味が強いネタには赤酢のシャリを合わせて、ネタの持ち味をより際立たせる。一方、イカやコハダ、白身魚などには、伝統のシャリを合わせる。優しい味わいのシャリがネタと調和し、口いっぱいに旨味が広がる手助けをする。

一つ一つが丁寧で香り高い寿司たち

そんな話を伺ったら、やはりためしてみたくなるわけで……。
長嶋さんに数貫握ってもらうことにした。
まずはネタを切り出していく。所作を見ているだけでもワクワクしてくる、立ちの寿司屋ならではの醍醐味だ。
まず出てきたのは、イカ。
イカは実にねっとりとした食感。藻塩の優しく複雑な塩味がイカの甘さをより強調する。実に香りの余韻の長い一貫。
次はアジ。
ぷりぷりの身厚なネタには、特製の煮切りが塗られ、目の前に。角が立つことなく、円さすら感じる煮切りの味わいが程よく脂の乗ったアジの輪郭を際立たせ、思わず笑顔になってしまう。
3貫目は、南蛮えび。見るからにねっとりとした肌の南蛮えびには海老の殻を粉末にしたものを少量トッピングすることでよりえび感をプラス。南蛮えび特有の濃厚な甘みに殻が醸し出す濃醇な香りが加わることで、全体としてより複雑で奥行ある一貫に仕上がっている。
ここからはシャリが赤酢ベースのものに。まずは、寿司の看板・赤身。なぜシャリを変えるのか、この一貫を食べて納得できた。赤酢の鮮烈な酸味にザラメのコクが加わることで、伝統シャリとは異なるパンチ力が加わる。これが力強いネタの味わいと出会うと、相乗的にうま味を高め合う。そんな一貫に昇華する。
最後にいただいたのは、皮目を炙ったサワラ。うま味の強い脂を赤酢のシャリがしっかりと受け止めて、合わさることで味わいに奥行をもたらす。

五感をいただき、感じたのは、多くの名店がそうであるように、長嶋さんの寿司も香りで食わせるということ。目で見て、耳で聞き、舌で味わい、食感を楽しみ、鼻で香る。

いやぁ、実に有意義な時間だった。
寿司に全振りしたお店にしたことが今回のガストロノミー若手30の受賞につながるきっかけとなった長嶋さん。
「本当に不安しかない中、あの英断をした当時の自分を誇りに思います」(長嶋さん)。

たまの贅沢、注目の味わいをぜひ皆さんも体験してみてほしい。

鮨 和食 ながしま

住所/新発田市諏訪町1-2-10
電話/0254-22-2275
営業時間/11時30分〜14時、17時30分〜21時
定休日/火曜日※月一回連休あり
駐車場/10台
席数/30席

鮨 和食 ながしま

この記事を書いた人
コジマタケヒロ

暮らした場所は、東京→新潟→京都→新潟。エリア情報誌の元編集長。
日本酒、サッカー、おいしいもの大好きのフリーライター。

PR